カラーベストはフラットでかっこいい屋根材。ただし、経年後の外装リフォーム時の塗装はよく検討してから
カラーベストは凹凸が少なくて、シンプルでかっこよく、値段が安いので、新築ではよく使われます。
厚みは5.2mmから7mm程度。水返しのない板状の形状です。板は突きつけて並べられ、左右のジョイントには小さなクリアランス(役割をもつ隙間)ができる設計です。

ジョイントのクリアランスに落ちた雨水は、この下の屋根材の板が雨水を受けて、次の下の板の上に排水します。
カラーベストに表面には、凹凸の模様が施されており、ピタリと密着しないようになっています。
仮に、これが下敷きの様にツルツルであれば、表面張力で常に雨水で濡れた状態になります。
カラーベストが新しいうちは、この表面の凹凸模様によるエアポケットのおかげで、毛細管現象が起こらないので、雨水の流れは良好です。
ただ、見えない重なり部分の凹凸模様に、長年に渡り、空気中のちり・ほこり・砂が徐々にたまってしまいます。これは改修の際に、取り外したときに確認することができます。毛細管現象で水が吸い上げた跡が、ホコリによる変色で確認できます。エアポケット効果が低下して雨水が逆流しています。

この時点でも、あふれた雨水が少量であれば、屋根材の下の防水紙の上を伝い、水下へ排出されます。
カラーベストは重なりが大きく、面でカバーする屋根材です。さらに防水性の高いアスファルトルーフィングが2次防水に使用されています。
そのため、屋内を濡らすほどの雨漏りは発生しにくい材料といえます。
写真は20年以上前のもので、途中塗装工事されたものです。極端な例ですので通常はここまでの逆流は稀です。
塗装は1回まで。できれば避けて。
同じカラーベスト系の屋根材でも、初期に製造されたもの板同士の重なり部分が小さいものでした。小さいと安く製造できるのですが
古くなると、毛細管現象によりあふれ出た雨水が、2次防水であるルーフィングに多く流れるようになります。現在までモデルチェンジごとに重なりが大きいデザインに改良されてきています。

発売されて 初期のカラーベストは塗膜等で水はけ悪くなると、雨漏りや野地板の腐敗などの不具合が出やすくなります。
下葺き材で、防水性の高いアスファルトルーフィングでも、多量で長期に渡り雨水にさらされると、油分が流れ、劣化します。
下葺き材の下の、野地板合板が吸水劣化すると、柔らかくなり、屋根材を固定している釘の保持力が低下します。、新しいうちでは考えられないのですが、釘が緩んで屋根材上下の重なりが広がることで、強風で飛散することもあります。

カラーベストに塗装するということは、重なり合ったセメントの板に、色の付いた樹脂の膜を張るということです。
塗料は液体なので、少しずつ屋根材の板の間を毛細管現象で入り込みます。葺かれた当初から、毛細管現象で空気中のちりやゴミも板の間に蓄積しているので、塗料と合体して さらに雨水の逆流しやすくなります。
一般的には、塗膜がある程度乾いた時点で金ベラなどで縁切りをしたり、塗膜が屋根材同士に固着しないようにスペーサーを挟んだりして対応されているようです。
ただ、ほとんどの場合、屋根の頂点部分、棟板金で屋根材を押さえつけて固定しているため、無理に金ベラや、スペーサーを挿入すると、薄い屋根材のため、破損しかねません。
キレイに縁切りできたとしても塗膜の厚みはゼロでないので、排水性が低下します。
理想のカラーベストの塗装は、キレイに屋根から剥がして、一枚ずつ洗浄・乾燥・塗装を行い、もとに戻すこと。。。ですがコスト的にあり得ません。
実際としては、カラーベスト系屋根材の改修は、多少の排水性劣化は目をつぶり、軽く表面塗装する。(塗装が初めてに限ります)
もしくは、屋根材の葺き替え(張替え)もしくは今流行りのカバー工法(古い屋根材の上に 新しい屋根材で重ね葺き)が考えられます。
塗装時期のカラーベスト棟板金の木下地が限界の場合も
棟板金を固定するために、一般的に木下地が使用されます。劣化した木材をそのままで、板金と屋根を塗装するとさらに、ひどくなるケースもあります。カラーベストはその形状のために、表面張力で雨水の一部が横に流れます。塗装したあとに、ヘラで持ち上げて、塗膜の縁切りをしますが、棟板金部分は木下地が固定されているため、処置が困難です。
写真はのように腐敗した木材は、釘の保持力が低下するため、強風で板金が飛散しやすくなります。写真は塗装リフォームされたカラーベスト系屋根の棟板金と、溶けているのが下地です。
(屋根が葺かれて30年以上経過してます。ここまで来るとカラーベストの経済寿命です。初期費用を考えるとコスパに優れた屋根材と言えます)
ひび割れしたカラーベストだけを差し替えすると、ルーフィングに穴が残ります
割れたカラーベストの差し替えは専用のスリッター工具で屋根材固定釘と一緒に引き抜きます。
その際、ルーフィング(2次防水)に釘穴が残り、さらに密着する屋根材と太陽熱で癒着した部分のルーフィングは破れてしまいます。

ルーフィングの穴を補修するには、差し替え部分より水上側の板を、棟板金(屋根の頂点)から順番に取り外す必要があります。
この手順を省略してその部分だけ差し替えても外観からはキレイに補修されているように見えます。屋根材の裏のルーフィングには穴が残るので、雨の流水経路によっては野地板を濡らしてしまいます。
手順を踏んでの屋根材の差し替えが困難な場合は、(見える部分のひび割れ限定ですが)シリコンシールなどで補修するほうが良いかもしれません。その場合も、排水経路をふさがないように考慮します。
類似品でノンアスベストの一部は塗装不適
アスベストの有害性が指摘されだして、率先して環境対応商品として発売された類似品の一部に塗膜が剥離してきているものがります。
塗膜が剥離すると毛細管現象でその間に雨水を含み、冬場に氷点下まで気温が下がると膨張して、ウエハース状になります。

焼成温度の低い、昔の陶器瓦でも見られる凍害現象ですが、凍害が出ると素材の経済寿命と考えてください。
気温の比較的高い大阪市の現場でも、屋根の北面に限り見られる場合があります。
浮いた塗膜の上に、塗装で更に膜を張ると、さらに水を含みやすくなります。屋根材の下の野地板を傷めないためにも、避けるのが良いです。
カラーベスト系屋根材は、塗装よりもカバー工法が安心
カバー工法(かぶせ葺き工法)をする場合、一般的に2次防水を施工した上で軽い屋根材をかぶせるので、防水層が2重3重となり
雨漏り対策としても安心です。材料種類もお選びいただけますので、ご検討ください。
石綿(アスベスト)が気になる方は、古い屋根材を除去して葺き替えも可能です。